スラム育ちの死霊魔術師と宮廷育ちのわがまま王女

6/8
前へ
/8ページ
次へ
重い足取りの中、ようやく国にたどり着いたが、街の至る所から黒い硝煙が上がっていた。焦げ臭い匂いと共に。 僕は嫌な予感がして、重い足取りを速めた。 そして、街の広場を抜け、スラム街にたどり着くと、炎と煙に包まれ、あれだけあったスラム街が跡形もなくなっていた。 「母さんっ!!」 僕はそれをもろともせず、家へ向かった。家には、家族が取り残されてしまっている。もしくはもう、、 炎に包まれた家の中は瓦礫と煙でいっぱいだった。 僕はそれを掻き分けて、家族を探した。 何故こんなことに。 「ううう、あああああ」 そこには母が瓦礫に埋まり、そして、ジョシュアを庇うかのように血を流し、死んでいた。そのジョシュアも顔が真っ青で息をしていなかった。 ノアは!? ノアの行方は分からず、死体もなかった。ただ、ノアの部屋は焼け、天井が崩れていたことから、そこにノアが埋まっているのかもしれない。 守るべき家族もなくなった。僕はどうすればいいんだ。僕は、その場で跪いた。火で焼け焦げた瓦礫が崩れてきて僕の体に当たる。痛いけど、死ねなかった。 街の方で爆撃音と誰かの悲鳴が聞こえた。おそらく隣国のガザリング王国と戦争しているのだろう。 僕は、その機に乗じて復讐して死のうと思った。父さんを殺した国への謀反だ。 僕は城へと乗り込んだ。敵国の魔術師やら兵士やらと王国の兵士が戦って、大量の戦死者を出していた。 僕はその戦死者を操り、王国の兵士たちを襲わせた。そうして、城の内部への道を作り、潜入した。城の内部へも王国の兵士たちが立ちはだかるが、戦死者の数と敵国の兵の数で押し切り、僕は、戦死者を縦にしながら、先頭に立って、何人もの兵士を押し退け、王女がいるであろう部屋に入った。 大きな扉がギジリと大きな音をかけながら開き、そこには数人のメイドと第一王女が居た。他の人々と王室は見当たらなかった。 「他の、王室のやつらは?」 そう、メイドの元に向かって言うと、メイドは、「他の方々はもう避難されました。私たちが逃げ遅れただけです」 どうやら逃げ遅れて、外に出られない状況だったらしい。 僕の目的はただ一つだった。この第一王女を誘拐して、父さんと同じくらい辛い目にあってもらう。復讐だ。 「そうか、なら第一王女。君を連れていく。来いっ!」 そう言って僕は、死体を遣わせて、抵抗するかもしれないメイドを押さえつけ、今抵抗を続けている王女を取り押さえた。 「やめなさい!この無礼者!いや」 「別に手荒なことをするつもりは無い」 僕はそう言って、死体を消して、その死体が掴んでいた場所を手で触った。そして少しなぜてから手で優しくにぎった。 「我をどこへ連れていく気じゃ?」 「さぁ、地獄かもしれないな」 僕は、そのまま王女の部屋の窓ガラスを破り、そして、死体の橋を作って、敵国の奴らも置き去りにした。 そのまま、王女を人目もつかない国の狭間の田舎へ連れていった。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加