最弱の勇者

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最弱の勇者

 こんな具合でモンスターに挑み、ほうほうの体で放り出されては、放っておけなくなった周囲の者を味方につけ、どうにか生き残っていた。  孫の実力はどうにも頼りない。それでも底抜けの自信を見ていると、どうにかなりそうな気がしてくる。そんな調子で、今回の村の者も、まんまと孫に乗せられていった。  ふと思う。  俺も孫に乗せられているのではないか?  俺の墓の前での一連の行動は、俺を焚きつけるための演技だったのではないか?  だから『最強』の勇者である俺が、見ていられないような振る舞いをしたのではないか?  生前の俺は強かった。他人に頼る必要などなかった。だから一人で冒険をしていた。  最弱な孫は自分一人では何もなせない。だから周りの人間を動かそうと体を張っているのではないか?  傷だらけになって。命を張って。そして結果的に、人々を守っている。  最弱の彼もまた、勇者なのではないか?  俺は肩をすくめる。考えるのは止めにした。  人の機微など、俺に分かるはずもない。孫がどう考えるかなど、俺に関係ある話ではない。  彼は本当に勇者かもしれないし、ただの馬鹿なだけかもしれない。  だがもう少しだけ、彼を見守って見ようと思った。  どんなモンスターにも太刀打ちできない最弱な孫が、最強の俺もできなかったことを成すかもしれない。  それを見たいと、俺は思った。
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