それはきっと、勇者の剣

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それはきっと、勇者の剣

 幽霊とは言っても、俺がゴブリンを倒せないというわけではない。  その気になれば死んだ身とはいえ、小鬼程度どうとでもなる。実態がないため、かつての剣技は使えないにしても、簡単な魔法程度であれば、造作もない。  それくらいできなければ、魔王など倒せるはずもない。  けれど今更、現世のことで煩わされたくはない。  もうこっちは死んだ身なのだ。墓石の上でゆっくりさせてほしい。  墓前で騒がしくしている青年を見ながら、再びため息をついた。  青年は気合いだけは入った声でゴブリンに飛び掛かるも、あっさりと転がっていった。 「……やるなゴブリン。勇者の孫、アレンの技を避けるとは」  いや避けてはいない。切り掛かる手前で小石に足を引っ掛け、転んだだけだ。  一方のゴブリンはというと、頭の薄毛をポリポリとかいていた。完全に舐められている。 「だがしかし! 俺は負けるわけには行かない! 俺は勇者の孫だから!」  孫、孫うるさい。遺伝しているのは顔の良さくらいではないか。剣の腕といい、腕っぷしの強さといい、はっきり言って全く才能がない。この様子だと魔術もまともに使えないだろう。  我が子孫ながら情けない。 「そして恐れるが良いモンスター! この右手の剣は、かつて我が祖父、魔王を倒した勇者グレンが手にした伝説の剣。魔王の結界すら貫いた業物だ。勇者の墓より掘り起こした、この剣にかかればお前などひとたまりもない!」  そう啖呵を切るアレンだが、俺は知っている。  その剣は真っ赤な偽物だ。
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