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ゴブリンの襲撃
「グォォォォン!」
ゴブリンが叫んだ。何事かと思うと草むらが揺れ、二匹、三匹と新たなゴブリンが現れた。うずくまっているアレンの周りをゴブリンの群れが取り囲んでいる。一体どこに隠れていいたのか、十匹程度のゴブリンがいた。
アレンとはいうと、何も言わずただただ震えている。
いくら弱いモンスターとはいえ、囲まれて袋叩きになれば、死んでもおかしくはないだろう。なんと言っても、何もないところで転んで頭を打ってポックリいきそうな男だ。
周りを囲まれている以上、逃げ場はない。あったとしてもアレンの様子では、足がすくんで動けないだろう。
無理やり切り抜けるしかないが、腰のひけた剣さばきではどうにもならない。
「ウォォォン!」
顔を見合わせたゴブリンたちは、声を張り上げると、一斉に飛びかかった。
アレンは引き攣った顔で剣を握り、振りかぶろうとするも全く力が入っていない。このままでは、やられるだろう。
顔を上げる。
仕方ない。手を貸してやるか。
静かに手をかざす。周囲の空間が歪み、エネルギーの渦ができる。
この世界の幽霊は、いわば魔力の塊だ。肉体がない今、物理的な干渉はできないが、魔法を操ることなら、不可能ではない。
そして俺はたった一人で、魔王を討ち倒した最強の勇者だ。その程度のこと造作もない。
吹き飛べ。
手を押しだす。魔力の渦が弾け、ゴブリンの集団に襲いかかる。複数の風が重なることによって生まれる真空の刃が、ゴブリン達を切り刻む。
「フギャアアアアアアアア!」
悲鳴をあげ、ゴブリン達は吹き飛ばされる。突風が過ぎ去った後は、飛び散った雑草が風に舞っていた。
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