孫、弱すぎ

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孫、弱すぎ

 孫、弱すぎ。  俺は自分の墓の上で、頭を抱えていた。  死んでからすでに五十年。雑草が周りを覆う古びた墓を、かつて魔王を倒した勇者、つまり俺が眠っていると知っている者はほとんどいない。  村はずれの森の、鬱蒼とした木々の奥。好んで来る者は、今となってほとんどいない。人里離れた僻地に俺の墓だけがあった。  その墓を背に、二十歳にも満たない青年が立っていた。その腕は貧相で、足は震えていた。どことなく俺と似た、金髪の顔には、いくつもの擦り傷が刻まれていた。  青年の右手には、古びた剣が握られていた。持ち手は長年の汚れで黒ずみ、刃先の色はくすんでいた。しかしその銀色に錆が見られないのは、かつて魔王を討伐した、伝説の剣に相応しい姿とも言える。  先ほどまで俺の墓の脇に埋められていたため、柄に土がついてはいるが。 「か、かかってこい……!」  ひきつった声で叫ぶ青年の前にはゴブリンが一匹。この世界で最弱クラスのモンスターで、子供でも蹴散らすことなど造作のない。多少悪知恵が働くだけの、ただの小鬼だ。  身の丈は十歳の子供程度。ちょっと拳を向ければ逃げ出すだろうモンスターに、青年は手も足も出なかった。  弱すぎる。けれど助けるわけにはいかない。  今の俺は幽霊だから。
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