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今まで悪態をついてばかりだったわたしが、いきなり何を言っているんだと笑われそうだが、紛れもない本心なのだ。どうして好きになったのかと聞かれたら答えられる自信はある。しかし槙田先生は予想していたものとは違うことを聞いてきた。
「橘先生は、俺とどうなりたいの?」
「どう……」
「俺は再婚する気もなければ彼女もいらないって言ったよね。俺はきみの期待に添える男にはなれないよ」
「でもわたしは槙田先生の彼女になりたいです」
「俺、勃たないよ?」
「それはわたしだけにですか? そもそも性欲がないってことですか?」
槙田先生は「うーん」と腕組みをする。
「性欲はね、あるんだよ。AV見て興奮はする。でもいざやるぞってなると駄目なんだ。本当に恋人が欲しくないのかと聞かれたら、そりゃ欲しいよ。でもまた浮気されたら嫌だなとか、自分は好きなのに相手は自分を好きじゃないって分かったら怖いなって不信感がどうしても拭えなくて。嫁と別れてから誰とも付き合ってないけど、もし誰かと付き合うことがあってそういう雰囲気になったとしても、勃つ気がしないんだよね」
つまり恋愛感情がどうというより、離婚のトラウマから同じ傷を負うことと、身体的な不安から相手を傷付けることを恐れているのだ。
「槙田先生、わたしのことはどう思ってるんですか?」
「プライド高くて打算的で見栄っ張りで」
「喧嘩売ってるんですか」
「仕事熱心で、少女みたいなところがあって、可愛いと思うよ」
「好きか、嫌いかで言ったら?」
「好きだよ」
「じゃあ、とりあえず付き合いましょうよ。槙田先生が恋人作りたくない理由は結局、相手を思ってのことでしょ。勃つか勃たないかは、その時にならないと分からなくないですか?」
「分からないから怖いんじゃん」
「大体ねェ、最後まですることが目的じゃないでしょう。好きな人と触れ合うことに意味があるんでしょう」
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