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「ただのマイペースな奴ってだけです。昔から自分のやりたいことしかしなかったから、勉強は全然しないし、でも体育だけは成績良くて。テニス部でそこそこ上手かったから、スポーツ推薦で大学まで行ったんです」
「弟さんは医学部行きたいとか言わなかったんだ」
「そもそも医学部行ける成績じゃなかったし。両親はわたしたちに跡を継げとか言ったことなくて。継がないなら閉院するからなんでもいいよーって。わたしが消化器外科行くって決めた時も、あっそって感じで」
何度も肉をひっくり返しては焼き加減を見ていた。わたしはしっかりめに焼きたいタイプだ。槙田先生は色が変わればさっさと取っていく。
「弟はテニスで大学入ったのに、いきなりテニスやめて英語勉強するわって留学したんですよね。ニュージーランドかどっかに行ったんですけど、相当楽しかったのか、就職活動もしないで卒業したら今度はフィリピン行ってくるわって。ニュージーランドじゃないのかよって」
槙田先生は楽しそうに笑っている。ほどよく焦げ目がついてうねったタン塩をレモン汁に漬けて口に入れた。
「向こうで仕事してたらしいんですけど、三年前に帰ってきて日本で就職して、あっという間に同期の女の子と結婚して今は一児の父です。両親は孫に溺れてて、わたしは邪魔者扱いで家を追い出されて、一人で暮らしてるってわけです」
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