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「え!? 終わり!? あとは何か聞いてない!?」
「それくらいしか知りません、僕は。ていうか、本人に聞けばいいじゃないですか。後ろにいるんだし」
「エッ!!」
振り返ると軽蔑の眼差しをした槙田先生が、わたしの後ろに立っていた。
「たーちーばーなァ」
「いやっ、たまたま帰りが一緒になっただけで、ねえ!?」
遠野くんに援護を求めたが、遠野くんは既に横断歩道を渡り切っていて、遠くからお辞儀をしてせいせいした様子で去った。槙田先生は怒っているというより、呆れているようだった。はあ、と息を吐いて短い髪の毛をガリガリ掻く。
「……なんの話してたの? 俺に言えないこと?」
「槙田先生と遠野くんが同じ大学だったっていう話です……」
槙田先生は目を大きくして「あっ、そうなんだ」と新鮮に驚いていた。
「俺に直接聞けばって言ってたのは?」
別に誤魔化すことでもないのだから、正直に聞けば済む話だ。けれども本人を目の前にすると勇気がなくて黙り込むしかなかった。面と向かって聞けないことを裏で嗅ぎまわるようなことをして最低だ。ようやく自己嫌悪。槙田先生は少し明るい声で言った。
「ねえ、ウチおいでよ」
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