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「きみ、ほんとそこで自分眺めるの好きだよね」  窓越しに槙田先生と目が合った。 「槙田先生こそ、いつも気配消して来るのやめて下さいよ」  すると槙田先生はわたしの前に立つといきなり両頬に触れた。職場で何をするつもりだとドギマギするも、親指で下瞼を引っ張られる。 「瞼の裏、白いじゃん。貧血じゃない? ちゃんと食ってる?」  明るい日溜まりの中でなんとも間抜けな顔をさせられて、槙田先生の手を振り払った。 「時間ある時に食べてるので大丈夫です」 「橘先生が元気ないと張り合いないから」  その点、槙田先生は活き活きしているように見える。最近では槙田先生が執刀する手術も増え、めきめきと実力を発揮しだした槙田先生に注目する医師は多い。わたしが元気がないように見えたなら、それは槙田先生に置いて行かれたような気がして焦っているからだろう。 「悩み事があるなら言ってね」  そう言われても、渦巻く焦りとか嫉妬とかそのまま伝えたら引かれるに決まっている。というより、複雑な心境を的確な言葉で言語化するのが難しいだけだ。代わりに突拍子もないことを聞いてみる。 「わたしって、いい女ですか?」 「へ?」 「いい医師ですか?」
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