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 そう吐き捨てて、わたしは背中に医局中の視線を感じながら手術室へ向かった。遠野くんがあらゆる画像を確認しながら緊張した面持ちで待っている。 「あれ? 槙田先生は?」 「知らない。あんな馬鹿、いてもいなくても変わらないから」 「えっ……、どうしたんですか……?」  一時でも槙田先生の技術と才能におののいて自信を失くしていたのが馬鹿馬鹿しい。槙田先生じゃなくても優秀な先生はたくさんいる。そしてわたしも。 「わたしたちで頑張りましょ、遠野先生。アホはほっといて」 「ひどいなぁ、馬鹿だのアホだの」  返事をしたのは遠野くんではなく、サージカルキャップを被りながら手術室に入ってきた槙田先生だった。左頬は赤くなっている。 「遠野先生、褥瘡防止のクッション持ってきて」 「は、はいっ」  どのツラを下げて来たのか。えらそうに指示をする槙田先生を、わたしは睨みつけた。 「何しに来たんですか?」 「橘先生に惚れ直してもらおうと思って」  近くにいた麻酔科医がこちらを見る。そんな話を聞かれたらすぐ噂になるのに、槙田先生はかまわず続ける。 「ダサいとこ見せちゃってごめん。俺が執刀するから、助けてね」
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