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「ほんっとうにごめん。楓子ちゃんが当直の日、俺もめぼしい式場探すから、候補絞って二人が休みの時に見に行こう」
「……わたしが好きそうなの分かるの?」
「ちなみに希望は?」
「港のホテルは嫌」
俺が一度目の結婚式をした場所である。俺は「了解」と苦笑した。
「式場探すのも日取り決めるのもわたしばっかり必死で、陽太はのんびりしてるから、それもちょっと不満」
「そうだね、そこは任せっぱなしで悪かったよ。俺もどうでもいいわけじゃないんだよ」
頬にかかる楓子ちゃんの髪をすくい上げて軽くキスすると、楓子ちゃんは拗ねた顔つきながらも素直に受け入れる。今度はしっかり重ねると俺に合わせるように唇を少し緩めた。彼女は案外快楽に弱い。つい数秒前までプンスカ怒っていたくせに、こんな簡単に絆されて大丈夫かね、と心配になる反面、そういうところを俺は実は気に入っていたりする。
カットソーの裾から両手を滑り込ませて、直に肌に触れた。手の平に収まるほどの小ぶりな胸を弄ぶ。
「ちょ……、っと」
「んーむ……」
「なんで胸ばっかなのよ」
「揉みまくったら今からでも大きくなるかな」
側頭部にスパン、と平手を食らわされる。
「どうせ貧乳ですよ!」
「冗談じゃん……。小さい胸も好きよ、俺。柔らかいし」
「胸だけ好きって言われてもね」
「俺がきみを好きなのは分かり切ってることだろ?」
十一月の空気が冷えだした黄昏時、まさか離婚後、この歳になって布団でもフローリングでもないリビングのラグの上で、思春期男子みたいに性欲を露わにする日が来るとは思わなかった。彼女の怒りをセックスで誤魔化す俺も大概卑怯だが、それにまんまと引っ掛かってくれる彼女が、何より可愛い。
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