槙田陽太 1

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 ***  そうは言っても結婚式場なんてサッパリ分からない。一人で式場に行くのは気が引けるし、あの分厚いプレッシャーの塊みたいな雑誌を買うのもちょっと……。ネットで口コミ見ながら探すか……と、スマホを開いて数分後には全然違う記事を見てしまったりする。  楓子ちゃんと結婚するのが決して嫌というわけじゃない。結婚式をしたくないわけでもない。ただ、元来恋愛に関して俺はマメでもなければこだわりもないので、投げやりじゃなく「なんでもいいんだよなぁ」と、なってしまうわけだ。  前回はほとんど全部、皐月と義両親が決めてきたっけ。二人で決めたのは日取りと席次くらいか。式場もランクも花も料理も、ほとんど事後報告だった。あれは……楽だった。  楓子ちゃんは一緒に決めたいって言うタイプだな。無理に俺の意見を取り入れなくても楓子ちゃんの好きなようにしてくれたら、それでいいんだけどなぁ。  ……イヤイヤ愛する可愛い恋人が俺と決めたいって言ってるのよ、やる気を出さねばならんでしょう。と、固く決心して、財布とスマホをポケットに押し込むと俺はようやく腰を上げたのだった。  
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