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「彼女のことが大好きなのね」
「はい?」
「彼女の機嫌を取ろうとするところも、苦手なのに頑張って自分で考えようとするところも、わたしの時は考えられなかったことだわ」
「その節はどうもすみません」
「わたしは最初から『この人にはたぶん無理だから』って諦めちゃってたけど、橘先生は粘るタイプなのね」
「良くも悪くも諦めは悪いね」
「いいじゃない、あなたにはそのくらいの人がいいわよ。多少強引に引っ張ってくれて我儘言ってくれるほうが」
確かに「あなたはあなたの好きにして」とか言われるよりはいいかもしれない。
「一緒に出掛けたかったって怒ってくれるなんて可愛いじゃない。なんにも期待されなくなったら終わりよ」
「ちょっと怖いこと言わないでよ」
「幸せそうな人見るとからかいたくなるのよ、ンフフ」
「ンフフじゃねぇよ、きみ、そんなキャラだっけ」
「ええ、こんなキャラよ。陽太が知らなかっただけね」
満足したのか、皐月はいつの間にか飲み干したカフェラテのカップと荷物を持って席を立った。
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