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「こんなに怒ってたら愛想尽かされるかもって思ってるところで、昨日あんな風に言われて、もう駄目だって、謝らなきゃって思ってるのに、なんでか逆に煽っちゃって可愛くない態度取っちゃうし……」
「あのね、俺は……」
自虐モードに入った楓子ちゃんは止まらない。
「彼氏には可愛いところ見せられなくて、素直になれないし、仕事でも川上先生に怒られるし、イライライライラしちゃって肌は荒れるし貧血になるし……わたし、わたし……」
その場に膝をついて崩れ落ちる。
「もう更年期なんだわ――――!!」
「はあ?」
歩道橋のど真ん中で、そんなことを叫ぶのである。俺は楓子ちゃんの前にしゃがんで、とりあえず宥めた。
「まあまあ、落ち着いて。さすがに早いでしょ、更年期は」
「若年性かもしれない!」
「きみの場合はただの疲れだって。貧血は良くないから、一度ちゃんと検査して鉄剤飲むとかした方がいいと思うけど」
「美と健康がわたしの売りだったのに、それがなくなったらプライドの塊しか残らなくて愛想尽かされちゃうっ」
とうとう蹲ってしまった。突っ込みどころがありすぎて何から言えばいいのか分からず、そうするとだんだん可笑しくなってきて、俺はついに吹きだしてしまった。
「ぶはっ、……はっはっはっ!」
楓子ちゃんはボサボサに髪の毛を乱したまま、「なに笑ってんだコイツ」みたいな顔で俺をぽかんと見ている。
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