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「いやぁ~……、きみ、本当に面白いよね。一緒にいると飽きないよ」
「わたしは真剣なのよ!」
「うん、それだけ好きでいてくれてるんでしょ? ありがとうね」
手を取って立ち上がらせて、楓子ちゃんの乱れまくった髪を整えてやる。風に靡いて唇に張り付いたのを、耳にかけた。
「そもそも俺はさ、プライド高いところも責任感が強いところも気が強いところも、でもちゃんと反省できるところも全部好きなんだよ。楓子ちゃんがもし更年期でも、歳取ってババアになっても、俺にとってはずっと可愛い人だよ。別にそれで愛想尽かすことはないから安心して。でも、やっぱり笑顔が好きかな。一番いい顔は俺に向けて欲しいなってのが本音」
「……」
「俺はさ、もともと恋愛下手だし一度失敗してるから、どうしても慎重になっちゃうとこがあって、のんびりしてるように見えるかもしれない。なんでもいいって言うことは多いけど、どうでもいいわけじゃないんだ」
気持ちが落ち着いたのか、楓子ちゃんは俺の隣に並んだ。どちらからということもなく手を繋いで歩き出す。
「楓子ちゃんが当直だった時、こう見えても一日中きみのこと考えてたよ。やっぱり喜んでもらいたいじゃん。指輪とかも見て、似合いそうだなって思うのもあったけど」
「そんなの初耳」
「楓子ちゃんの好みもあるだろうって思うとやっぱり本人に希望聞こうと思って、話してなかった」
歩道橋を下りてマンションの方へ行こうとすると、スーパーに寄りたいからと反対方向へ引っ張られた。冷やし中華を食べたいのは健在らしい。
「さっき楓子ちゃんはペース乱されるとイライラするって言ってたけど、やっぱり結婚すんのやめとこうって思う?」
楓子ちゃんはそれには思いきり首を横に振った。
「そりゃ結婚しなくても一緒にはいられるし、これからも怒ることはあるだろうけど、この先もずっと一緒にいたいし……家族になりたいから……」
「そうだね、俺もだよ。なるべく俺も楓子ちゃんが殺意を抱かないように気を付けます。だから楓子ちゃんも笑顔見せるなら他の男にじゃなくて、俺にして下さい。持ちつ持たれつで」
「はい。……わたしもごめんなさい」
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