槙田陽太 3

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 ―――  その夜、楓子ちゃんのマンションに帰ったら、楓子ちゃんは着替えもせずソファでぐったりと横になっていた。楓子ちゃんの前で屈んで、ブランケットを掛けてやる。 「気分はどう? 今日は午後、ずっとしんどそうだったけど」  楓子ちゃんは横になったまま、どこか泣きそうな声で、 「わたし、やっぱり若年性更年期障害なのよ……そうじゃなきゃ病気だわ……。ごめんね、こんなことになって……遠慮せず良い人がいたら、」 「なに馬鹿なこと言ってんの、冗談でも怒るよ」 「だって」 「楓子ちゃんは更年期でも病気でもありません。でも確実に今までの体とは違う」 「なにそれ、どういうこと」  そこで俺は仕事帰りにドラッグストアで買ったものを、ビニール袋から取り出した。楓子ちゃんは「えっ?」と素っ頓狂な声を出す。俺が買ったのは、妊娠検査薬である。 「生理きてる?」 「き………てなかったわ」 「検査しておいで。線が二本出たら、式の準備も急がないとだねぇ」  ニッ、と笑うと楓子ちゃんは立ち上がってすぐさまトイレに駆け込んだ。  患者の体には厳しいのに、自分のこととなると鈍感なんだから、これも医者の不養生ってやつなんだろうか。  俺はソファですっきりした気分で待ち構えていた。そのわずか数十秒後、楓子ちゃんの間抜けな叫び声が聞こえて、また笑った。                                      END
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