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 *** 『えーっ、じゃあ結局ヨリは戻らなかったってこと?』 「そのようです」  和樹との一件で地味にへこんだわたしは、また例の夢を見た。顔も分からないバーチャル彼氏がプロポーズしてくれる夢を。あの夢を見たあとは虚しくて誰かと話をしたくなるので遥に助けを求めたが、子どもの習い事やPTAがどうとかで時間が取れないと断られた。その代わり休日にビデオ通話を掛けてきてくれた。やはり持つべきものは友である。画面の向こうの遥は洗い物をしたり洗濯ものを畳んだりと忙しく動き回っていて、わたしはそれをストレッチをしながら目で追い掛けていた。 『松永くんかー、わたしは高校時代のあんたたちしか知らないけど、仲は良かったもんねぇ。今でもたまに会ってるって聞いた時は寄り戻せばいいのにって思ってたけど、それはなくなったわけね』 「大体、今更すぎんのよ。なんでもっと早く言わなかったのかっての」  せめて三十前半に復縁を申し出てくれていたら、もし駄目だったとしてもまだダメージは少なかったかもしれない。繋ぎ止めようともっと必死になることもできたかもしれない。この十七年のあいだで和樹との復縁を期待していた自分は確かにいた。だけどいつまで経ってもそんな話は出ないから、もうないだろうと諦めかけていたところに告白されて、心構えがないまま流され、なんか知らないうちに一方的に振られた。必死になるには突然すぎた。タイミングが悪かったのだ。  両脚を広げて前屈したら股関節がポキポキ鳴る。
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