3

12/15

547人が本棚に入れています
本棚に追加
/201ページ
「橘先生はなんで結婚したいの?」 「好きな人と家庭を築くのって素敵じゃないですか」 「結婚はゴールじゃないよ」 「そうは言われましても、お嫁さんになるのが夢だったんです」 「お嫁さんになるのが夢だったのに、医者になったの? 結婚から遠ざかる道行っちゃって何してんの」  この、人を小馬鹿にした笑い方はやっぱり嫌いだ。大体、結婚に憧れるのに理由がいるのだろうか。 「じゃあ槙田先生は素敵な人が現れても結婚しないんですね?」 「しない。だって、もうしたことあるから」  うっかり聞き流しそうなほどアッサリ言った。  したことあるって? 結婚を? 槙田先生が?  そんなまるでディズニー行ったことあるみたいなノリでできる結婚がある?  それ以前に槙田先生と結婚する人がいるんだとか、槙田先生って恋するんだとか、色んな感情が駆け巡って最終的に出た結論が、 「ま、負けた……」 「きみは俺のことなんだと思ってんのよ」  地面に崩れ落ちたわたしの手首を掴んで起こしてくれる。 「結婚したのは三十五歳の時。離婚したのは三十九歳」 「生意気な」 「ねえ、俺の方が年上なの忘れてるよね」
/201ページ

最初のコメントを投稿しよう!

547人が本棚に入れています
本棚に追加