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 雰囲気はどうあれ、槙田先生がそうやって真面目に相談に乗ってくれたうえにわりと嬉しいことを言ってくれたので、落ち込みかけていた自信とプライドは持ち直した。視界がクリアになって急に色んな音が耳に入る。五感がハッキリするのは気持ちが上がった証拠だ。 「ありがとうございます。槙田先生のおかげでなんか元気出ました。わたし、名医になってわたしに負けないハイスペイケメン捕まえて槙田先生をぎゃふんと言わせます」 「うん、……なんかそう言われると応援する気なくなっちゃうけど、いいんじゃない。それで。――じゃ、元気になったところで明日からさっそくお願いね」 「え?」 「消化器外科に専攻医(レジデント)来るんだって。橘先生、指導医(オーベン)として色々教えてあげてね」  そんな話は初耳だ。誰が、いつ、そんなことを決めたのか。川上か。 「いやぁ~、いつ切り出そうか悩んでたんだよ! 橘先生みたいな熱心な人がいてくれて本当によかった!」  槙田先生の、ここ一番のすっきりした笑顔。すべてこの瞬間のために仕組まれたことのように思えてならなかった。ちょっと話を聞いてくれて、慰めてくれて、一瞬でもいい人だと思った数分前の自分を戒めたい。  やっぱり、槙田陽太は嫌な男だ。
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