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これが夢か現実か、もう分かるようになってしまった。ラグジュアリーホテルのレストランでバーチャル彼氏と食事をしている。この時点で夢の中の自分が夢だと理解していた。どうせこのあと指輪を贈られてプロポーズされた直後に起きるんでしょ、知ってる。
「僕と結婚してくれないか」
そう言って顔も分からない彼がわたしの手を取る。なんだか分厚い、武骨な手だ。
「――って言ったら、どうする?」
聞き慣れた眠たげな声に、わたしは顔を上げた。さっきまで目の前にいたのはスーツの男性だったのに、何故か白衣姿の槙田先生が。
「違う!!」
叫び声とともに目を開けた。いつもの天井、小鳥の囀り、うららかな朝。怖い夢より怖い夢を見て、朝から心臓がバクバクしている。なんで槙田先生が。
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