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 槙田先生が怒っている。眉を吊り上がらせて、少し顎をしゃくらせて。山本先生に怒鳴った時とは違う、子どものような怒り方だった。睨まれてもまったく怖くなくて、むしろ可愛いとすら思ってしまった。 「でも槙田先生、仮にわたしと遠野くんがそうなっても、茶々入れたいって面白がってましたよね」 「ほんとにそうなるとは思わないじゃん」 「……もしかしてヤキモチですか?」  普段動揺なんてしない槙田先生が、後頭部を掻いたり目を泳がせてうろたえている。肯定もしないけど否定もせず、誤魔化すように「土曜日の午後、二時にマンションの下」と残して背を向ける。 「え?」 「スイーツ行くんでしょ」  かすかに耳が赤いのは見間違いだろうか。初めて見た拗ねた顔が予想外に可愛くて、槙田先生が遠のくと、わたしは窓に寄りかかって頭を抱えた。遠野くんが言いかけていたことなんて、すっかり抜けていたのだった。
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