1.奇妙な違和感。

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1.奇妙な違和感。

 今日(こんにち)までクラスにいた同級生の雰囲気が、全くの別人になっていた、という経験をしたことはないだろうか。  さっきまで友人たちと初恋のカレの話をしていたのに、その同級生が現れた途端、乙女じみた妄想が蜃気楼となって消えた。  教室に入ってきた彼を見た瞬間、乃木(のぎ) 陽彩(ひいろ)は強烈な違和感を抱いた。  彼、二宮(にのみや) (さとし)の容姿は今までと変わりないのに、彼を形取る雰囲気だけが違っている。言ってみれば、何者かが彼の体に憑依し、操っているかのようだ。  無論、その違和感に気づいているのは陽彩(ひいろ)ただひとりで、陽彩の友人やその他のクラスメイトは二宮の異変を異変とも思っていない。  クラスの仲間に笑みを向け、ごめんごめんと昨日の欠席を()びる二宮を、つい怪訝(けげん)な目で見てしまう。「昨日は市民プールで特訓をしていたから」と喋る彼の声は一昨日(おとつい)までと別段変わりない。  二宮をジッと見つめる陽彩(ひいろ)の視線を追い、友人の綾子が声をひそめて尋ねた。 「ところでさぁ。今日の水泳大会、どうなると思う?」
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