42人が本棚に入れています
本棚に追加
ったく。良倉のオーラは相変わらずわかりにくい!
色が無いからこそ、感情の揺れも、体調を崩しているかどうかも、判別しにくいのだ。和志に乗せられて、後部座席に座った良倉に、陽彩はそれまで着ていた彼のコートを脱いでかぶせた。
良倉は熱で朦朧とするのか、完全に目を閉じていた。眠っているのかもしれない。
私がコートを借りちゃったから、体が冷えてしまったんだ。靴も、海水でびしょ濡れだし、せめて脱がせておこう。
「和志さん、タオルかなにかないですか?」
「えっと、待って。多分トランクに」
和志からフェイスタオルを借りて、スニーカーと靴下を脱がせて丁寧に拭いた。
再び彼の隣りに座ると、和志がエンジンをかけて車を走らせた。
ふと視線を感じて横を向く。重く閉じていた瞼が開き、彼の澄んだ瞳と目が合った。ドキンと心臓が跳ねる。
良倉は「ありがとう」と吐息のような声をもらし、ズルズルと体を傾けた。
っえ、え、えぇ!?
「あらら」と振り返った和志が、呆れて笑みをこぼした。
「仕方のない奴だねー、遼飛は。陽彩ちゃん、しばらくそのままでいてあげて?」
「は、はい……っ」
最初のコメントを投稿しよう!