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「あ、うん。さっき電話があって、病院にいること話した。そしたら、迎えに来てくれるって。着くの八時回るみたいだけど、良かったら良倉さんも乗っていってくださいね」
え、と良倉が目をぱちぱちと瞬いた。はっきりとした驚きが伝わった。
「あ、そういえば。今日は良倉さんに大事な話をしようと思ってメールしたのに。結局、見たのかどうかもわからずに、スルーだったなぁ」
「……あ」
陽彩は横目を向けて、途端に唇を尖らせた。今の今まで忘れていた、そんな表情をする良倉を見て、呆れてため息を落とした。すっかり不貞腐れていた。
「話って、なんだったの?」
「それはまた今度言います。この流れで言うのも癪ですから」
「……キミさ。時々わけのわからないタイミングで敬語使うようになったよね?」
「はい。そうですね。いつまでもクソ生意気なJKと思われたくないんで」
陽彩を怪訝な目で窺い、「エスパー?」と良倉が首を傾げた。「何を馬鹿なこと言ってるんですか」と続け、なおも拗ねた表情で前を向く。
「学校は大丈夫だったか? 荷物とか」
「はい。聡くんから連絡があって。私の荷物預かっててって、お願いしたんで」
そっか、と言って、良倉が手元のレシートに目を落とした。「あ」と声をもらしている。電光掲示板に支払い番号が表示されて、彼が自動精算機へ進む。
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