1.奇妙な違和感。

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「絶対やばいよね」と綾子に同意する直美の声にも、いつもの覇気が見られない。陽彩は彼女らに向き直り、でも、と言葉をついだ。 「二宮くん、昨日は特訓したって」 「あんなの当てになんないよ」 「そうだよ、陽彩。相手はあの長内(おさない)だよ? 中学までは水泳部のエースだったらしいし、どっかの県大会でも優勝するほどの実力だったって」 「でも今は帰宅部でしょ?」 「……それは。一年の時に問題を起こして退部になったからで」 「二宮くんは……」 「さぁ? 泳ぎが得意なんて話、聞いたことないよね?」 「じゃあ仮に負けたとして……私たちもどうにかなるって? まさか本当に、クラスの皆が奴隷になる、なんてこと……あると思う?」  陽彩は友人二人の顔を交互に見比べた。綾子と直美が微妙に眉を寄せ、同時に口ごもる。その沈黙が肯定を意味していた。二人の予感が的中したら、まさに地獄だ。  廊下側の席に座るのが陽彩で、その机に腰を預ける形で寄り掛かるのが綾子、そして机の側面に肘をついてしゃがむのが直美だ。三人は大抵いつもこのスタンスで話し込んでいる。
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