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陽彩は男子数名に囲まれる二宮 聡に再度目を向けた。二宮のそばにはつい先日までいじめのターゲットとなっていた田中 亮太の姿もあった。
ガラガラと音を立て、前方の、黒板側にある扉が開いた。クラスのざわめきが一瞬で静かになる。
「よぉ、今日は来てんじゃん?」
声の主を察した途端、ピシッと教室の空気が張り詰めた。普段から上履きの踵部分を踏みつぶす足音が、ペタペタと床を鳴らした。
このクラスのリーダー格である長内 雅也だ。中学時代、水泳部で鍛え抜いた体格の良さと風貌から、一部の派手目の女子に人気があり、支持を得ている。噂によると三年生の不良とも繋がりがあるらしい。ヒエラルキーのトップに君臨する存在だ。
「二宮〜、昨日はてっきり逃げたのかと思ったぜ」
「……おはよう、長内くん」
百八十センチをゆうに超える長内と百七十センチあるかどうかの二宮が向かい合って立つ。さながら狼と子羊のようだ。二宮の猫背が殊更彼を小さく見せる。
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