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「今日の水泳大会、わかってるよな? 五十メートル自由形で競って、負けた方が勝ったやつの言うことを聞く。勿論、おまえが負けたら……田中とペアで遊んでやるよ」
二宮の顔がサッと青ざめる。長内は強気な目で人差し指を向けると「あと、クラスのやつも」と続け、周りを見回した。
「二宮みてぇに俺に楯突くようなら順番にボコすからな?」
皆が一様に息を呑み、俯いた。楯突くやつなんているわけがない。人の上に立ち支配することに悦びを感じる長内は、決して敵に回してはいけないタイプだ。彼に目をつけられないよう、上手く立ち回るのが賢いやり方だ。
「じゃ、じゃあ。もし仮に僕が勝ったら、これまでの横暴をやめて欲しい。田中くんをいじめることもクラスのみんなに嫌がらせすることも……」
「おいおい、二宮〜。いじめなんて言いがかりはやめろよ。退屈しのぎにちょっと遊んでやってるだけじゃん?」
「長内くんにとっては遊びでも……田中くんは嫌がってる。僕はこれ以上見て見ぬ振りはできないから」
そう言って二宮は下ろした拳をキュッと握り締めた。が、それも微かに震えている。
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