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「あの紫月さん……この前はあんな言い方して失礼しましたが……。俺、ああでも言わねえと紫月さんに重いって思われて嫌われると思ったんです! だから遊びで男と寝てみたいなんて言っちまって……。でも違うんです! 本当は男と寝たいんじゃなくて、あなたと――という意味なんです!」
決して興味本位の遊び半分な気持ちで言ったんじゃありませんと語気を強める。
「俺とって……三春谷、おめえまだンなこと言って」
「好きなんです! 高校時代からずっと好きでした! でも男同士だし……どんなに想っても報われないって諦めてました! けどあなたが男と……あの鐘崎って人とデキてるって知って……気持ちを伝えずにはいられなかったんです!」
ずっと――好きだったんです!
三春谷は受話器の向こうでそれだけを繰り返した。
「三春谷――。気持ちは分かった。そう言ってくれんのは有り難いが、俺には既に生涯を誓った相手がいる。おめえだって人生を共にしようって女性がいて、結婚を控えた身じゃねえか。一時の好奇心や気の迷いでいずれ後悔するような馬鹿なことをして欲しくねえ。彼女を大事にして現実を見るんだ。それがお互いの為だぞ」
「紫月さん……。分かってます。ただどうしても誤解されたままじゃ嫌だったんです! 遊びでも何でもなくて、真剣にあなたが好きだからあんなことを言ったって……伝えたかっただけです」
「そっか。おめえン気持ちは分かったから。誤解もしてねえ。だからもう連絡してきちゃダメだ。彼女を大事にして幸せになれよ」
「……はい。分かりました。あなたに気持ちを伝えられただけで……充分です。想いが報われないだろうってことは分かってますし、もうこのことであなたを困らせるつもりもありません。ただ――。ただ俺、心配なんです。鐘崎さんはあなたにとっては良い人かも知れません。でも世間的にはヤクザでしょ? あなたが……ヤクザと一緒にいるのは……やっぱり心配なんです!」
紫月は溜め息を抑えることができなかった。
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