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「ありがとう李さん。感謝しますよ。焔老板にもよろしくお伝えください」
郭芳はコースターに自分の連絡先を書きつけると、
「ご存知の通り私はシャバに出たばかりなのでね。名刺なんていう洒落た物は持ち合わせていない。これで失礼――」
薄い笑みだけを残して店を後にしていった。
◇ ◇ ◇
翌朝、李の機嫌は悪かった。といっても顔つきや態度は普段と何ら変わらずではあるが、常に行動を共にしている舎弟の劉からすれば彼のご機嫌が斜めなのはお見通しだったようだ。
朝の九時過ぎ、まだ周と冰が出勤してくる前である。
「それで――どうだったのです、昨夜は」
コトリ、卓上に茶が差し出されて李はハタと相棒を見上げた。
「ああ、劉か。すまんな、いただこう」
淹れたての茶を一口啜りながらもやはり普段よりは口数が少ない。
「お会いになられたのでしょう? 例の郭芳――」
劉は昨夜、周の接待に同行して行ったので、郭芳との様子がどうだったのかと気に掛かっているのだろう。
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