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「ビルの解体かぁ。ここからも見える位置なのかな」
冰も半ば心配そうな顔つきながら、何も影響が無ければいいけれどと言っている。
「――で、その解体されるビルってのは爆破でやらなきゃならんほどに巨大だってのか?」
周が案内の資料をめくりながら眉根を寄せる。
「いえ、それがどうもそうではないらしく――。建物自体はさほど大きくないようですが、目的は最新技術の試行にあるようですね」
「つまりは何だ。試しに吹っ飛ばしてみようってわけか」
「まあ、早い話がそのようです。説明によると爆破もタイマーを使用した遠隔操作だとかで、行われるのは深夜のようですね。海沿いですから音はそれほどでもないのかと……」
住所を見れば確かに同じ区内ではあるが、すぐ目の前という位置でもない。それに、小さなビルというなら心配するほどでもないだろうか。
「とにかく決まっちまったもんはどうこう言ったところで始まらんか」
様子を見るしかなかろうと周はまたひとたび小さな溜め息と共にどっぷりと椅子の背に身体を預けた。
まさかこの爆破解体に絡んで予想もしなかった焦燥に見舞われることになろうとは、この時の周も、そして李や冰ら誰にとっても思いもよらぬことであった。
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