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「そういやさ、今日懐かしいヤツに会ったわ。高校ン時の一コ下の野郎でさ、三春谷ってヤツ!」
お前も覚えがないか? と訊く。
「三春谷? ああ、あの剣道部だったヤツか?」
高坊の時はよくうちのクラスに顔を出していたなと言う。鐘崎はほとんどしゃべった覚えもなかったのだが、紫月のところにしょっちゅう来ていたので記憶していたのだ。
「今は就職して都内に住んでるらしくてさ。実家帰って来んのも久々だとかって言ってた。ちょうど祭りの屋台組んでる時に会ってな。卒業以来だから、会うのは十三、四年ぶりだって」
「ほう? じゃあ懐かしかっただろう」
「まあね。すっかりいい社会人って感じだったわ。何でも建築関係の会社に勤めてるとか」
鐘崎にとっては特に興味を覚える相手でもないが、元気にやっているなら良かったなと言って、三春谷についてはそれきり話題に上がらないまま夕膳を囲んだ。
その彼と再び顔を合わせることになったのは、次の週末のことだった。たまたま用事があって紫月が実家の道場へ顔を出していた時だ。三春谷が突然訪ねて来て驚かされることとなったのだ。
「おう! 三春谷じゃねえのー」
応対に出た綾乃木に呼ばれて紫月が顔を出すと、三春谷は緊張気味の固い表情でおずおずと頭を下げてよこした。
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