絞り椿となりて永遠に咲く

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「ん? ああ、これ? そうそ! お陰様でなぁ」  紫月は照れたようにその薬指で頭を掻きながらも薄っすらと頬を染めてはにかんでいる。三春谷にとってはそんな反応も意外であった。はにかむ笑顔と染まった頬の朱が、その胸中を物語っているからだ。きっと彼はその結婚相手を大切に想っているのだろうことが窺えるからだった。 「……あの、じゃあ奥さんは?」  もしかしたら今もこの邸内にいるのかも知れない、そう思って視線を部屋の奥へと泳がせる。 「ああ、いや……。あいつは今、仕事で出ててさ」 「……お仕事ですか。奥さん働いていらっしゃるんスか?」 「ま、まあな!」  えへへと照れた頬は先程よりも濃い朱色に染まっている。 「結婚……されたばかりなんスか?」  あまりにも初々しい様子にそう思っただけだった。 「いや、もう四、五年になっかなぁ」 「……そんなに前に? じゃあお子さんも……」 「あー、ううん。ガキはいねえけどさ」 「そうですか……」 「ま、ま、俺ンことよかおめえの祝いだべ! 結婚式、秋なら今いろいろ忙しいんじゃね?」  そう振られて紫月の結婚相手についての話題を逃してしまったのが残念でならなかった。
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