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「俺もちょっとマズイ話向きだなって思ったんだけども。けどまあ、社交辞令とも受け取れるし、実際ホントに飲みに行ってる暇なんてのはねえだろうなって思ってさ」
その場の話で盛り上がっただけで三春谷の方でも仕事に結婚準備にと忙しいのは事実だろう。紫月としては実際に三春谷がいつどこどこで――などと本当に飲みに行くつもりでもないだろうと思っているようだ。
「ふむ、そうだな。まあもし――またその三春谷ってのが声を掛けてくるようなら一度くれえは付き合うことになることも念頭においておかにゃならんか――」
鐘崎はその際、自分が行ければ一緒に行くとして、もしも都合が付かなければ春日野や橘といったお付きと一緒に行かせるかと言った。
「うん、まあそん時はまたおめえに相談するさ」
「ああ、そうだな」
「それよか晩飯! 今日はおめえン好きなハンバーグにしたぜー!」
「おお、そいつぁ楽しみだ」
以後、三春谷については話題に上がらないまま、夫婦水入らずの夕膳を楽しんだのだった。
翌朝、鐘崎は紫月側付きの春日野に話を通すことにした。何事につけても備えあれば憂いなしだからだ。
春日野は自治会の飾り付けで三春谷と偶然会った時にも紫月と一緒にいたわけだし、その三春谷のことも当然目にしているだろう。その時の様子なども聞いておくに越したことはない。春日野もまた、三春谷と会ったことははっきり覚えていたようだ。
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