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次の朝、鐘崎は橘と春日野から昨夜の報告を受けていた。
三春谷という後輩が組のことで紫月に苦言めいたことを囁いていたらしいと聞く。やはりか、想像した通りだったというわけだ。
「どうも嫌な予感がしてなりません。あの三春谷とかいう男、姐さんを単なる先輩という以上の感覚で見ている気がしてなりません」
橘は見たまま感じたままを口にするタイプなので、春日野のように言葉を選んで丁寧に物事を説明することもないのだが、鐘崎にとっては現状把握には有り難いことといえる。
「ふむ、俺も高校時代あの男がしょっちゅう紫月を訪ねてうちのクラスに顔を出していたのを見ているからな。当時はヤツも剣道部員ということで、道場育ちの紫月にアドバイスがどうのという口実で寄って来てはいたんだが――」
だがそれも在学中のことだけで、卒業してからはトンと接触もなかったので特に気に掛けてはいなかったのだ。とにかく厄介なことにならないよう注意を払うに越したことはない。
「まあヤツも結婚間近だというし、要望に応えて一度は飲みに付き合ったんだ。今後どうこう言ってくることもねえとは思うが――念の為紫月の周囲には気を配ってやっておいてくれ」
「かしこまりました。これまで以上に心に留めておきます!」
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