絞り椿となりて永遠に咲く

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 携帯を持っていないと言ったことで連絡手段は実家の家電にかけるしかないわけだが、だからといって普通ならばよほどの用事でもない限り遠慮するのが殆どだろう。そこを堂々かけてよこすこと自体に何か特別な感情か、あるいは何かしらの思惑があるのではと疑いたくもなるというものだ。それが恋情とは限らないが、電話を受けた綾乃木もまた同様で、いったい何の用事があるのだろうと胡散臭く思ったようだ。  とはいえ、かかってきたことを紫月の耳に入れないでおくわけにもいかない。綾乃木は鐘崎も邸にいる時を見計らって伝えることにしたのだった。 「ふむ、またあの三春谷から電話とな――。今度は何の用だというんだ」 「さあ……? もしか結婚式に出てくれとかかね?」  この秋に式だと聞いていたから、もしかしたら招待状でも渡したいということだろうか。それにしては時期的に早過ぎるが、紫月は特に疑いもなく暢気に考えているようだ。 「だが住所も分かっているんだ。招待状なら郵送すりゃいいだけだろうがな」 「それもそうだよな……」 「とはいえ無視したところでまたご実家にも手間を掛ける。一応要件だけは聞いてみるか――」  その要件次第では一度自分が三春谷に会って、きっちりと話をつけることも前提の上、鐘崎は紫月に連絡を取るように言った。
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