絞り椿となりて永遠に咲く

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「冗談にしちゃ度が過ぎるぞ三春谷。聞かなかったことにしてやるから」  くだらねえことを言ってねえで嫁さんを大事にするんだ――普段気のいい彼が割合真面目な声音でそれだけ言うと、席を立ったのだろう。椅子の引かれる音を拾った。すぐに橘と春日野が紫月を連れて店を出るようだ。引き留めようと慌てた三春谷を源次郎と清水が静かに取り囲む様子が窺えた。  一分も待たない内に紫月が橘らと共に店から姿を現した。 「……! 遼! 来てたんか……」  鐘崎は無言のままうなずくと、先に車に行っていろと視線だけでそう云った。  またしばしの後、源次郎らに押されるようにして出てきた三春谷を待ち受ける鐘崎の瞳には冷たく燃える蒼白い焔が宿っているかのようだった。  驚いたのは三春谷だ。なぜ今ここにこの男がいるのかと驚き顔でいる。しかも、源次郎ら見知らぬ男たちに取り囲まれていることにも驚愕といった表情で、要は紫月の護衛として組員たちが付いてきたのだろうということが察せられたのか、冷や汗が滲む。三春谷にしてみれば密かに監視されていたような気分になり、やはりヤクザのやり口は汚い――と、そんなふうに感じているのだろう。 「まさか……見張ってたんスか……?」  たかだか先輩後輩の飲み会にまで監視をつけるとは小心者めと言いたげに睨みを効かせながら険を浮かべるも、当の鐘崎は当然だとばかりの無表情でいて、微塵の動揺すら感じさせない堂々ぶりだ。 「ツラを貸してもらう」  たった短いそのひと言は得体の知れない魔物が地を這う地鳴りのようだった。
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