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幸い冰は社長室で茶器などの片付けをしていてその場にいなかったので、それだけは良かったと思った李である。いかに昔の同胞とはいえ一度ファミリーを裏切るような身勝手をした男だ。そんな人間が周と冰の関係を知ったところで、どうせろくでもない噂を立てるくらいしか脳がないと思うからである。
周は突然の来訪に驚きつつも特には嫌味のようなことも言わなかったし、達者で何よりだと温情のある言葉を掛けていたが、その後すぐに接待の会食が入っていた為、ほんの挨拶程度で済んだことは幸いだった。
ところが郭芳の方ではせっかく訪ねて来たのにそれでは物足りなかったのだろう、周の都合がつかないのなら李とだけでも話がしたいと言い出した。一緒に酒でもどうかと誘われ、気は進まなかったが了承したのは、この男が何の目的でわざわざ周を訪ねて来たのかを探る意味合いもあってのことだった。
李はハナからこの男を信用していない。面倒事の芽は早い内に摘んでおくに限るということだ。
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