1196人が本棚に入れています
本棚に追加
「それはそうと――ご長男の周風老板はご結婚なされてお子も授かったそうじゃありませんか。しかも生まれた赤ん坊は男の子だとか。あの頃、妾の子だからという理由で焔老板を邪険にしていた側近の重鎮連中にとってはさぞかしご満悦でしょうね」
ふん――と、嫌味ったらしく言う。
「――おい、言葉が過ぎるぞ」
「ああ、失礼。別に悪い意味ではありませんよ。ファミリーもご安泰で実に結構と言ったまで。それより焔老板の方はどうなのです? もうあの方もいいお年頃、ご結婚はなされたので?」
少々図々しい質問に答えてやる義理はない。
「――そんなことよりお前さんの方だ。まさか焔老板に会う為だけに来日したというわけでもあるまい。この日本で一旗上げようなんざ考えているわけではなかろうな」
じろりと鋭い視線をくれられて男はタジタジと苦笑気味だ。
「そんな大層なことは考えておりませんよ。ですが、まあ……ちょっと仕事の用向きもありますのでしばらくはこの国に滞在するつもりです。ファミリーを離れたとはいえ、その後も東南アジアでは裏の世界にそれなりのパイプがありましたのでね。焔老板のお役に立てることがあればとは思っています」
最初のコメントを投稿しよう!