身勝手な愛

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「役に立てることだ? ファミリーを抜けたお前さんが今更何を言う」 「私はね、李さん。ファミリーを抜けたくて抜けたわけじゃないんです。あの頃――あなたも私も組織の重鎮たちからは何かと疎まれていた焔老板(イェン ラァオバン)の下にいた。自分のボスが邪険に思われているのはどうにもいけすかなくてね。世界的に活躍できるモデルになれれば顔も広がる。少しでもいい情報が提供できて焔老板(イェン ラァオバン)のお助けになれる。そう思ったからこそファミリーを去ったのです。今でも私のボスはあの人だけだと思っているんですよ」  だから少しでも周の役に立てることがあれば惜しみなく力になりたいなどと言う。李はますます呆れてしまった。 「焔老板(イェン ラァオバン)はご覧の通りご自身のお力で起業なされて経営も順調だ。力を借りる必要などない」 「順調とおっしゃいますが、それは表の企業経営に於いては――ということでしょう? あの方だって本来はマフィアだ。今ではすっかり堅気として成功なされているようですが、私は裏の世界でも……というよりは裏の世界でこそあの人には頂点にいて欲しいのですよ。その為ならどんなことだって惜しまない。ですが――正直なところ残念と思うのも事実です」 「残念――だ?」
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