第一章 Eight

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 しかし、今回は何度も川に落ち、何度も袋に詰められる。しかも、森宮が使用していたのはゴミ袋だ。まるで、ゴミを持って歩いているかのように、森宮は堂々と追手の前を横切って車に乗った。まあ、裏社会で無暗に四乃守に攻撃する者はいない。裏社会の一族や老舗というのは、そういう怖い存在なのだ。 「四乃守か……」  俺が袋から顔を出して少年を見ると、足が既に金属化していた。だが、金属になっても動いていて、脈も打っている感じがする。 「四乃守の現当主には、子供が三人。長男は確か……天慶(てんけい)さん。病気を見通す目を持ち、治療方法を指示する」  しかし天慶は、自分で治療出来ない不器用さがあった。でも、病気を見抜く頭脳は本物だろう。 「兄は不器用でね……手術すると、殺してしまう。でも、病気の知識と、観察眼が凄くて……多分、天才。それなのに、一族の病気は分からない」  そして、次男は英ト(えいと)、多分、この少年だろう。  しかし、医師免許を持っていて、大学院で研究しながら、研修医もしているというプロフィールにしては、幼く見える。 「英ト君は、学生?」 「そうだよ。裏社会だからね……でも、五年前を最後に学校に行っていない」  英トは五年前に、一族の奇病が発生し、金属化が始まってしまった為に、家に引き籠ったという。それは、最愛の弟に、金属化している事を知られたくなかったかららしい。 「金属化か……鉄とかならば、まだわかるけど、ダイヤモンドの心臓とかは、理解できない」  ダイヤモンドは、人体で生成できるものではないだろう。成分があったとしても、それだけの圧力が、体内に在るとは思えない。
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