第一章 Eight

4/15
前へ
/200ページ
次へ
 俺は流動体と呼ばれる、液状の物体を自分で操作すると翼にして、川へと飛び込んだ。パラシュートを付けていなくても、俺は翼で飛んでいたので、死んではいない。  しかし、落ちた衝撃で、暫し泳ぐことも出来なかった。  だが川に流されつつも、裏社会側へと泳ぎ、隠していたバイクまで走った。そして、バイクに乗ると、裏社会にある薬屋、年年歳歳へ走り込んだ。  年年歳歳は店長が留守で、バイトが店長を呼び出そうとしたが、俺は止めると金を出した。 「これが、俺が今持っている全財産。それで、解毒剤を作って、ここに届けて欲しい」 「今、店長が……」  時間が無いので、俺は保管していた血液を出すと、金の上に乗せた。 「頼む!」  もう、ここしか残っていないのだ。 「……金だけ受け取って、解毒剤を作らなかったらどうするのですか?」 「……信じるしかない」  少なくとも年年歳歳の店長は、この血液で意味が分かるはずだ。そして、俺が頼るしかなかった意味も察するだろう。 「持っているのは血液だけですか?」 「いや……」  僅かだが、食材に混入していた植物も持ってきた。 「これは、毒草……しかも、天然のものを、複数ブレンド」  毒草が天然ものだったので、かなり厄介になってしまったのだ。成分が複雑すぎて、簡単には解毒できない。 「血という事は、これを使用された人がいる」 「そうだ」  だから、時間が無いのだ。
/200ページ

最初のコメントを投稿しよう!

91人が本棚に入れています
本棚に追加