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俺は流動体と呼ばれる、液状の物体を自分で操作すると翼にして、川へと飛び込んだ。パラシュートを付けていなくても、俺は翼で飛んでいたので、死んではいない。
しかし、落ちた衝撃で、暫し泳ぐことも出来なかった。
だが川に流されつつも、裏社会側へと泳ぎ、隠していたバイクまで走った。そして、バイクに乗ると、裏社会にある薬屋、年年歳歳へ走り込んだ。
年年歳歳は店長が留守で、バイトが店長を呼び出そうとしたが、俺は止めると金を出した。
「これが、俺が今持っている全財産。それで、解毒剤を作って、ここに届けて欲しい」
「今、店長が……」
時間が無いので、俺は保管していた血液を出すと、金の上に乗せた。
「頼む!」
もう、ここしか残っていないのだ。
「……金だけ受け取って、解毒剤を作らなかったらどうするのですか?」
「……信じるしかない」
少なくとも年年歳歳の店長は、この血液で意味が分かるはずだ。そして、俺が頼るしかなかった意味も察するだろう。
「持っているのは血液だけですか?」
「いや……」
僅かだが、食材に混入していた植物も持ってきた。
「これは、毒草……しかも、天然のものを、複数ブレンド」
毒草が天然ものだったので、かなり厄介になってしまったのだ。成分が複雑すぎて、簡単には解毒できない。
「血という事は、これを使用された人がいる」
「そうだ」
だから、時間が無いのだ。
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