27人が本棚に入れています
本棚に追加
なにこれ。動けない。
何かが私を四方から圧迫しているみたい。
「どうした、藤川」
椎名くんが振り返るけど、声が出ない。
なんなの本当に。
目に見えないものに抗っていると、突然目の前が真っ白になった。眩しすぎる光を浴びて目が見えなくなったみたい。目の前にいたはずの椎名くんも、古臭い神社の景色も何もかもが光にかき消されて見えなくなる。
もしかして、超常現象?
変な鳥居をくぐったせい?
どうしよう、誰か助けてっ!
と、その時。
「コーン」
またキツネの鳴き声が聞こえた。目を凝らすと、正面に本物のキツネがいる。
『突然で申し訳ないコン。お腹が空いて死にそうなのコン。油揚を買ってきてほしいのコン。そうしたら元に戻すコン』
目の前のキツネは変な語尾で喋りながらペコペコと頭を下げた。
元に戻すってどういうこと?
そう尋ねようとした途端、再び強烈な光に襲われて、私は目を瞑った。
「おい、藤川! 大丈夫か、藤川!」
気がつくと、神社の境内へと向かう短い石段の上で、椎名くんが私を抱き抱えていた。
「うう……今のは……?」
「た、大変だ……! お前、大変なことになってるぞ!」
椎名くんはやたらとテンションを上げている。
「大変なことって?」
「見てみろ、これ!」
「えっ?」
椎名くんが私のお尻を触った。ゾワっと鳥肌が立つ。
「えっち!」
思わず体を捻ると、フサフサした尻尾が椎名くんのほっぺをビンタした。
「いってー! いや、痛くないけど」
「どっちだコン」
コン?
自分のツッコミに違和感を覚える。いや、その前に私、椎名くんをどうやってビンタした?
おそるおそる自分のお尻を見てみる。
するとそこには……キツネのようなフワモコの尻尾がパタパタと揺れていた。
「コーン!!(驚)」
最初のコメントを投稿しよう!