椎名くんは驚かない

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 どういう仕組みなのかは知らないけど、尻尾は私のスカートを突き抜けて外に出ているっぽかった。まるでスカートから生えているみたいに。 「キモ! 取って!」 「待て。それだけじゃないぞ藤川。頭の上にも、ほら!」  椎名くんがスマホを起動して、カメラのレンズを私の頭上に向けた。パシャリと撮られた画像には、ピンと立った茶色のケモミミが生えているのが写っていた。これは多分、キツネの耳だ。 「うぎゃー何これ!」 「リアルど○ぎつねさんだ!」  私は吉岡○帆か。  ハロウィンも終わったのにコスプレみたいで恥ずかしい。 「取って、取って!」  私自身も耳をつまんで取ろうとしたけど、幻のように上手く掴めなかった。尻尾も同様で、自分では触ることができない。 「助けてよ、椎名くん!」 「まあまあ、落ち着けよ藤川」  そう言う椎名くんは真顔でじっくりと私を見つめていた。 「なんでそんなに落ち着いていられるのっ⁉︎ カノジョが獣人化しちゃったんだよ⁉︎ もっと慌てるべきじゃない⁉︎」 「うん。まあそうなんだけどさ。なんとなく、これはこれで可愛いからいいんじゃね? って思っちゃう自分がいる」 「何それ! え、いま可愛いって言った⁉︎」  椎名くんが滅多に言わない褒め言葉を口にしたから、私はびっくりして尻尾をパタパタ振ってしまった。 「ヤバい。どうしよう。藤川がめちゃくちゃ可愛く見える。俺の目はどうかしてしまったのか⁉︎」 「どうかしてるのはお前の頭だコン」  私が可愛いのはいつものことだろ。  って、ツッコミもキツネ化してるよ、マジでヤバい!  
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