27人が本棚に入れています
本棚に追加
どういう仕組みなのかは知らないけど、尻尾は私のスカートを突き抜けて外に出ているっぽかった。まるでスカートから生えているみたいに。
「キモ! 取って!」
「待て。それだけじゃないぞ藤川。頭の上にも、ほら!」
椎名くんがスマホを起動して、カメラのレンズを私の頭上に向けた。パシャリと撮られた画像には、ピンと立った茶色のケモミミが生えているのが写っていた。これは多分、キツネの耳だ。
「うぎゃー何これ!」
「リアルど○ぎつねさんだ!」
私は吉岡○帆か。
ハロウィンも終わったのにコスプレみたいで恥ずかしい。
「取って、取って!」
私自身も耳をつまんで取ろうとしたけど、幻のように上手く掴めなかった。尻尾も同様で、自分では触ることができない。
「助けてよ、椎名くん!」
「まあまあ、落ち着けよ藤川」
そう言う椎名くんは真顔でじっくりと私を見つめていた。
「なんでそんなに落ち着いていられるのっ⁉︎ カノジョが獣人化しちゃったんだよ⁉︎ もっと慌てるべきじゃない⁉︎」
「うん。まあそうなんだけどさ。なんとなく、これはこれで可愛いからいいんじゃね? って思っちゃう自分がいる」
「何それ! え、いま可愛いって言った⁉︎」
椎名くんが滅多に言わない褒め言葉を口にしたから、私はびっくりして尻尾をパタパタ振ってしまった。
「ヤバい。どうしよう。藤川がめちゃくちゃ可愛く見える。俺の目はどうかしてしまったのか⁉︎」
「どうかしてるのはお前の頭だコン」
私が可愛いのはいつものことだろ。
って、ツッコミもキツネ化してるよ、マジでヤバい!
最初のコメントを投稿しよう!