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「どうしよう、こんな格好じゃ家に帰れないよ〜! お母さんに『あんた、いつの間に日ハムファンになったの?』とか言われたらどうしよう。うちは代々ドラゴンズファンなのに……」
「それは肩身が狭いな。俺んちは親父が日ハムファンで母ちゃんが阪神ファンで兄貴がヤクルトファンで姉貴がメジャーリーグのエンゼルスファンだぞ」
「そんな家庭でよく戦争が起きないね」
「みんなアンチ巨人なんだ。しかし俺が隠れ巨人ファンだということは家族には秘密だぞ」
「どうでもいいコン」
こんな話をしている場合じゃないのに、椎名くんといるとついどうでもいい話ばかりしちゃう。こんな状況なのに、いつもながら空気がゆるい。
「そんなことより、どうしたら元に戻るか考えないと……」
元に戻ると口に出した時、私はふと思い出した。
「そういえば……何か買ってこいって言われた気がするコン」
「何それ? 誰に?」
「分かんないけど、多分ここのお社のキツネ神かなあ。お腹が空いてるから何か買ってこい、買ってきたら元に戻してやる的なことを言われたような気が……」
「なんだよ、もう答えもらってんじゃん」
椎名くんはガッカリしたような顔をした。
「で、何買ってくればいいの」
「それが……肝心なところが思い出せなくて。多分、キツネが好きな食べ物だと思うんだけど」
「分かった! キツネといえば、あれだ!」
椎名くんは何か思いついたらしい。
「お願い、買ってきて! こんな格好じゃどこにも行けないコン」
私は両手を合わせ、しっぽをパタパタさせてお願いした。
すると、椎名くんがなんだかキュるんとした瞳になった。
「いや、マジでこのままでもよくね?」
「よくないコン!」
私は再びしっぽで椎名くんの横面をビンタした。
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