27人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
隣を見ると、優しい笑顔の椎名くんがいた。
私が獣人化したのに、全然驚かずにこんなかっこいいことを言ってくれるなんて……。思わずキュンとなる。
「椎名くん……」
「その代わり、キツネになったら毎晩しっぽをモフらせてくれ」
「嫌だコン!」
私はしっぽで椎名くんの背中をモフッと叩いた。
「もう、冗談言ってる場合じゃ──」
呆れて文句を言おうとした時、椎名くんが私の肩をギュッと抱き寄せた。
「本当だよ。藤川がどんな姿になったとしても、俺はずっとそばにいるから」
えっ。
うわ。
どうしよう。泣く。
いい男じゃないか、椎名くん。
「ありがとう……」
ホロリと来てしまいそうになり、私は目を瞑った。
その唇に椎名くんの唇が優しく触れる。
体が内側から熱くなって、私のそばから秋が一瞬いなくなった。
私、椎名くんのカノジョで良かったな。
心からそう思った時だった。
フワッとほのかに、椎名くんの唇から甘いお出汁の匂いがした。
この匂いはもしかして、きつねうどん?
「椎名くん、もしかしてコンビニできつねうどん食べてきた?」
私が尋ねると、椎名くんは少し照れた顔をした。
「バレたか。いろいろ買ってるうちに俺も腹減っちゃってさ。でもコーンスープはあったかいまま持ってきたかったから、うどんはイートインですぐ食べてきたんだー。熱々の油揚で舌やけどしちゃったよ。ホラ」
ペロッと舌を出す椎名くん。やけどしているかどうかなんて分からないけど──今、この人、重要なことを言ったよね?
「油揚……それだーっ!!」
最初のコメントを投稿しよう!