椎名くんは驚かない

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 ◇ 「それだーっ! って言ったところで、目が覚めたのよ」 「へえ〜」  私が今朝見た夢の話をニコニコしながら聞いてくれているのは、友達の佐藤さん。  頭とお尻にキツネのケモミミとしっぽが生えたなんていう荒唐無稽な話なのに、ちゃんと聞いてくれる優しい子だ。 「本当に変な夢だったー。朝、学校に行く途中で見に行ったらその場所空き地になってたし。ちょっと怖かったなあ」 「もしかしてそれ、うちの高校の七不思議のひとつ『縁結びの稲荷神社』かも」 「縁結び?」  佐藤さんは不思議なことをいろいろ知っている。 「うん。志望校が同じ受験生がカップルでお参りして油揚をお供えすると、必ず二人とも合格させてくれるっていう超縁起がいい神社らしいんだけど、どこに現れるか全然分からないの。私もお参りしたいんだけどなあ」 「へえ〜。初めて聞いた」 「椎名くんと一緒に放課後行ってみたら? カップルで行かないと入り口が見つからないのかもしれないよ」  佐藤さんはニコニコしているけど、なんだか怖い。 「何の話?」  するとそこへ椎名くん本人が現れた。  夢の中で私のことを甘やかしてくれたことを思い出してちょっと照れる。  夢って願望の表れだとかいうけど、つまりそういうことなのかな?  受験のストレス? 欲求不満? いや、まさかね。  あんなのただの夢だと思い込もうとした時だった。  佐藤さんから私の夢の話を聞いていた椎名くんの目が丸くなった。 「俺もその夢見た! 今朝!」 「え、マジ?」 「マジ! 朝起きたらきつねうどん食べたくなってた」  私と椎名くんは顔を見合わせた。  ……これはいったい、どういうこと?   
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