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連邦保安局第23宙域本部の任務に、惑星ソラ小惑星帯の監視がある。小惑星帯に進入を企てる宇宙船の監視だ。そのような宇宙船を見つければ、進入を止めるように警告する。理由は二つある。一つは小惑星帯を飛行するのは危険を伴うこと。もう一つは、惑星ソラが立ち入り禁止に指定されていること。
多くのパトロール艇は小惑星帯外縁部軌道で監視を行うが、一隻だけは小惑星帯の中で監視を行う。パトロール艇の監視の目を潜り抜けて、小惑星帯の中に入った宇宙船を探すためだ。
もっとも、危険な小惑星帯を抜けようなどと考える者は極少なく、この辺りを飛ぶ宇宙船は稀だ。だから、パトロール艇は大概何事もなく巡回を終えて基地に帰還する。この日も、巡回任務に就いた二人は、そう考えていた。
「今回の巡回も何事もなく終わりそうだな」
コックピットで、隊長が隣の操縦席にいる隊員に言った。
「そうですね。ほっとしますよ」
隊員がのんびりと応じた。あと少しで交代のパトロール艇が来る。そうすれば基地に帰って休憩だ。ゲームの続きでもするか。そんなことを考えていると、突然、アラーム音が船内に鳴り響いた。コンソールのモニターが救難信号を受信したことを告げている。
「隊長! 救難信号です。識別番号は――」
隊員が言った。思わず大声になっていた。
「その識別番号の船だと、おそらく個人宅配業者だろう。近道しようとしたんだな。馬鹿なことをするヤツだ」
「発信場所はソラです」
「ソラか、厄介な場所だな。俺たちが一番近いな。救助に向かうぞ。本部に連絡だ。操縦は俺がやる」
隊長はパトロール艇の機首をソラに向けた。
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