禁断の惑星

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      *     *      *  気がついたとき、ユーマは操縦席に座っていた。普通に呼吸ができるから、この惑星には空気があるということだ。  操縦席から降りて、辺りを見回した。船内は霧がかかっていた。そして、霧の中に人が立っていた。 「ロミじゃないか!」  驚いた。恋人のロミだった。しかし、死んだはずの彼女がなぜここにいる? ロミは事故で亡くなった。ついひと月ほど前に起きた、スーパーワープ恒星間宇宙船の事故だ。それまでは、ロミは惑星間航路の連絡船のカフェテリアで働いていた。 「わたし、スーパーワープ宇宙船のカフェテリアで働くことにしたよ。高校の同級生がそこで働いてて、誘われたの」  唐突にロミが言った。ユーマが宅配便の配達員に転職して、少し月日が経ってからのことだった。スーパーワープ宇宙船の乗員の給料は、今のロミの職場と比べればはるかに高い。 「郊外の家を買うためにお金を貯めなきゃね」  ユーマとロミは公立の集合住宅で暮らしている。郊外の一軒家は二人の夢だ。けれど、ユーマはロミの転職に反対した。スーパーワープ航法は危険なのだ。  恒星間の飛行は、時間短縮のためにワープ航法で行っているが、より時間短縮ができるスーパーワープ航法というものが開発された。連邦政府は経済活動を促進するために、スーパーワープ航法を直ちに認可した。  けれど、一部の専門家からは、それはまだ確立された技術ではないので、事故が起きる確率が高いと言われていた。  事実、スーパーワープ宇宙船が就航してから事故が相次いだ。ワープ航法で亜空間に入った宇宙船が、現実空間に出てきたとき、船体が破壊されていたのだ。もちろん、乗っていた人たちは全員死亡 している。  しだいに世論も運行停止に傾いていったが、経済効果や利便性を考えて支持する人も多くいて、連邦政府もなかなか決断しなかった。そこに起きたのが、ロミが乗った宇宙船の事故だった。それはスーパーワープ宇宙船最大の事故だった。乗員と乗客合わせて8366名が犠牲になった。この事故を契機に連邦政府は運行停止を決定した。
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