禁断の惑星

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「本当にロミなのか? でも、ロミは死んだはずだ」 ユーマの頭は混乱した。 「本当にロミよ」  ロミに似た女は歩いて来ると、ユーマの前で立ち止まった。  躊躇いがちに彼女の頬に手を触れた。柔らかくてちょっと暖かい。懐かしい感触だった。目の前にいるのは確かにロミだ。 「気が付いたらここにいたの。またユーマと暮らせるよ」  ロミは微笑みを浮かべる。 「こちらに来て」  ロミはユーマの手を取ると、宇宙船の外に連れ出した。  大きな三角屋根の家が、霧の中に浮かぶように建っている。この星の建物か? いや、とてもこの星の建物だとは思えないんだが。 「あの家は、ここにあったのか?」 「ううん、私が出したの」 「出したって?」 「こんな家が欲しいなって思ったら、そこに現れたの。テラスで椅子に腰かけて、コーヒーを飲んだり、本を読んだりできるでしょ」  リビングから張り出したテラスには、椅子とテーブルが置かれている。そう言えば、こんな家が欲しいと、ロミはよく言っていた。  だが、欲しいと思えば現れたとは、どういうことだ。 「家を買ったら犬を飼いたい、と言ってたよね。私はゴールデンレトリバー」  ロミが言った。  家の戸口に犬が現れた。ゴールデンレトリバーだ。尻尾を振りながら駆けてくると、ロミに飛びついた。ロミがしゃがむと、ぺろぺろと彼女の顔を舐める。 「ユーマは柴犬が欲しいって言ってたじゃない」  そうだ、柴犬が欲しかった。ニッポン人の血を引く俺は、やっぱり柴犬だ。縫いぐるみのようにころころとした可愛い子犬が欲しいな。  ユーマの足元に柴犬の子犬が現れた。ユーマの足の周りをゴム毬のように飛び跳ねている。  メビウスが言った噂話というのは、本当のことだったのだ。この星では願望が実体化するのだ。はっきりと覚えていないが、俺はもう一度ロミに会いたいと願ったんだろうな。そして、その願いをこの星は叶えてくれたんだ。死んだはずのロミが俺の目の前にいる。
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