禁断の惑星

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         *    *     *  小惑星帯を抜けたパトロール艇は惑星ソラの上空を飛んでいた。  コンソールのモニターに目を遣りながら、隊長が言った。 「遭難船のビーコンが無事だったので助かった。捜索時間が大幅に短縮されるからな」 「通信装置が壊れてなければもっとよかったんですが」  隊員が残念がる。 「そうだな。でも、多くを望んでもしかたがない。ビーコンだけでも動いていてよかったよ」 「ところで、なぜ惑星ソラは禁断の惑星になったんでしょうね」  隊員は、モニターを見ている隊長の横顔を、ちらりと見て尋ねた。 「なぜかな。我々パトロール隊にも、その理由が知らされないなんておかしいと思うだろう。知られてはいけないことが、この星にはあるんだよ」 「いろいろな噂は聞きますけどね。どれが本当なんでしょうね」 「噂はいろいろとある。だがな、最も本当らしい噂ってのを話してみようか」 「えっ、そんなのあるんですか」 「これは秘密事項なので口外しちゃいけないんだが、図らずもお前はソラに降り立つことになったんだ。知っておいてもいいと思う。俺の身内で、保安局のお偉方と知り合いだというのがいるんだ。そいつに聞いた話だ。お前、惑星ソラに霧が出ているときは、着陸禁止だと教わっただろ」 「ええ、研修でそう教わりました。理由は言われませんでしたけれど」 「その霧というやつが曲者なんだ。人間の願望を実体化させる霧なんだ。霧が出ていると、望んだものが現れるんだ。ソラの調査隊は驚いた。なにしろ、欲しいものを頭に浮かべるだけで現れるんだから。中華料理やフランス料理のフルコースが現れるわ、離れた星に残してきた恋人が現れるわ……」 「味気ない異星での任務が、楽しくなったんじゃないですか」 「ところが、そうじゃなかった。何を思ったか、ゾンビを出したヤツがいたんだ。もちろん調査隊はパニックだ。阿鼻叫喚だ」  隊長は顔を顰めた。 「そんな……」 「何人かはゾンビの餌食になった。けど、被害が大きくなる前にゾンビは消えた。幸運だった」 「どうして消えたんですか」 「ゾンビが消えたとき、霧も消えていたんだ。どうやら、霧が消えれば、実体化した願望も消えるらしい」 「この星を立ち入り禁止にした理由が分かりましたよ」
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